とある夏の夜。
瀬戸内芸術祭を訪れるその前の週だったでしょうか。
北陸方面から帰る高速道路のPAで私、花火を見たんです。
それはとても美しい花火でした。
その一輪の火の花を写真に、少し盛って写真に収めたいと思った欲望を写真の悪魔につけ込まれました。多重露光モードを解除し忘れたカメラは設定をそのままに、夜を超え、海を超え、はるか香川県。

さざなみに反射する光が眩しい、うたた寝のような潮騒も三度目でしょうか。
まず豊島、そして小豆島と周りアートを堪能させてもらいました。
特に小豆島は初めての訪問。他の島と比べても桁違いに大きいのでレンタカーで巡りました。
ダイナミックな地形を活かした大型の作品が実に気持ちがよろしいのです。

数々の小さなトラブルに巻き込まれながらも小豆島からの最終船になんとか乗り込み、徐々に水平線が消え、鮮やかな夜へのグラデーションを描く大海原に黄昏ているときに気がついたのです。カメラの設定が多重露光のままだと。

瞳をギリギリまで薄目にすればいつもとは違うフォトジェニックな作風に見えないこともないようでないですね。
その日は枕を涙で濡らし、うどんを啜り、翌日に備えるのでありました。

うどん屋さんもなんだか躍動感溢れダイナミック。

奇数で撮り終え、電源を切ると普通に写っていますね。物足りなくらい。
内藤礼さんの作品、豊島美術館。

フジツボみたいですね。とても落ち着いた、瞑想するためのような空間です。
我々は借りようとしていたチャリが一台しかなく、灼熱の天候と相まって迷走するはめの空間になってしまいましたが。。

その一台しかないチャリを爆走させ港から大きく離れた南の集落、甲生へ。
以前からファンである冨安由真さんの作品、かげたちの見る夢へ。
廃墟一軒、まるまるインスタレーションになっていて唸らさせれました。
たまたまお客さんが他にいなかったこともあり、どこまでが演出なのか戸惑うほど。
本物の中に少しだけ虚を混ぜることで起きる困惑。夢だと思ったら現実だった、って夢を見ていたような。

ほんの少しの時間、一人で海を見ていました。
ちなみに甲生から港まではトゥールドフランスのようなえげつない坂道。電動お助けがついてなお足がもげるかのようなダッシュでなんとか小豆島行きの船に。

港からすぐの入り組んだ路地が楽しい、その名も迷路の街。
方向感覚がなくなっていく時間が止まったような道。そして見上げると必ず目に入るのが小豆島霊場第58番、西光寺さん。
仏塔に導かれるように街を彷徨う、集落自体がインスタレーションのような素敵な街並みです。

こちらも何度目かの目さんの作品。
人家が一気に蟻塚に。
毎回毎回小説よりも奇です。

この日のハイライトの一つがワン・ウェンチーさんのゼロ。
竹で編まれた巨大な鳥籠のような、カボチャのような。
ゴロンと寝転ぶと吹き抜ける風、小鳥の囀り。シャングリラ。

色々ボケたりしたのですが全てリーゼントと一体化してしまいどうにもならない写真になってしまったのです。しかしそれもまた良き思い出。
全てを回り切ることなんて全然できなかったし、また次回、カメラの設定を確かめてから遊びに来たいと思います。

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