先日のお休みに行ってきました映画MINAMATA。
個人的に師匠と呼ばせてもらっている、写真家の石川武志さんが若かりし日にユージンスミスのアシスタントとして過ごした日々の舞台でもある熊本県の静かな漁村で起きた事件。日本人なら名前は絶対聞いたことのある水俣病のお話です。一枚の写真が世界を動かす、そんな時代の歴史に残る大きな事件を、お恥ずかしながら僕はざっくりとした知識と、石川さんがお話ししてくれた当時の話でしか知らなかったので、なるほどと大きな学びもありました。

単純に排水垂れ流す悪の企業から証拠の写真を撮って世界を変える!みたいな事件ではなく、被害にあった市民の中でもどこに落としどころをつけるのか、工場で働いている人と、そうでない人との温度差、何よりそこで作り出される化学物質はビニールなど高度経済成長の日本において欠かせない材料となっていたこと。それは糾弾する側だけでなく全ての日本人の問題意識に関わってくるのだと知りました。

これらは当然今の原子力発電所の問題とそのまま同じ。地方と都会。今と未来。分断の構図は今も昔も大きくは変わらないことが最大の問題なのかもしれません。
もう一つ、現地の人々との交流を通して少しづつ日常の大切な部分をカメラの前に見せてくれる水俣の人々の姿が印象深い。そしてその交流は作家自身の人間性にも作用して、傷ついた肉体や精神の奮起にも繋がっていきます。特にボブディランの曲を歌ってるとことか個人的に渋かった!同時にその障害を持った子の写真で有名に、なってしまった、子と家族が抱えるその後の問題。当たり前ですが、障害を持った子供たちは写真家が有名になるための道具ではない。
僕は世界報道写真展とか毎年見に行って色々考えさせられてもらっているのですが、その賞は渦中にいる人々の役に本当に立っているのかと思うことがあります。この惨状を知ってほしいという思いに応えたというのは写真家側の便利な言い分ではないかという、本当に頭が痛い、しかし考えなければいいいけない問題についても改めて考えるきっかけになりました。

素敵な映画でしたが、ただもうちょい脚色しないで、事実を事実として伝えるドキュメンタリー映画でもよかったのではとも思ったり。ハリウッドでもジョニーデップでなくてもいいから、石川さんのminamata noteにも書かれているような、過剰ではない人間味のあるユージンとエンターテイメントではない公害の実情を見たかったかも。
それでも知ることへ、一歩踏み出すきっかけとしてはいいのかしら。
そして映画を見た方にはぜひ石川さんのminamata noteも読んでもらいたいです。
写真も文章も本当に凄いのです。


朝日新聞にも大きく取り上げられたみたいです!
ちょうど昨日新宿で行われているインドのカルカッタ写真の展示に行ってきたのですが、ユージンのことで大きく取り上げられても全くいつもの調子で、慈しむように混沌の街のことを話してくれる石川さんが改めてかっこいいなと思うのでした。

その後喫茶店に場所を変え、色々語ったりしたのですが、思えばもう何年も前、一度面識があったくらいの石川さんと銀座の路上で偶然出会った時、軽くご挨拶をと思ったらそのままお茶しようと気さくに声をかけてくれた日のことを思い出します。
写真の撮り方などを手取り足取り教えてもらったことはないですが、その時喫茶店で聞かせてもらったお話は今も自分の中で宝物となっているのです。
かっこいい写真を撮る人は星の数ほどいるけど、一番かっこいい生き方をしている写真家は自分の中で石川さんだと今も昔も思っているのです。

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