ずっと昔の話なんですが、地元の図書館で石川梵さんの写真集、鯨人を読んだ時に、自分の中で何か、歯車のようなものがギギギ・・と動き出した衝撃を感じたことを覚えています。
インドネシアで鯨の取材を終えた後も、世界の辺境、聖地を巡り写真を撮る梵さん。
最近はいわゆる写真ではなく映像も撮ってらっしゃるという話を知ったのは昨年訪れたトークショーだったでしょうか。

常に最前線で活躍されているカメラマンの方が取る映画とはどういったものなのか。興味が湧く一方で、梵さんの写真が好きなファンとしては少し寂しい気持ちもどこかあったのかもしれません。
いずれにせよ好奇心はムクムクと沸き上ります。
類い稀な行動力と優しく、そして鋭い洞察力、そんな梵さんが幾度となく通いつめるネパールの山奥の村、ラプラック。世界でいちばん美しい村。

色々な友人も製作に携わっている作品。上映まで待ちきれず、本日渋谷にて行われた試写会にお邪魔させてもらってきました。

いやはやいやはや、仲良くしていただいるから言うのではなく、これは本当にすごい。
まず心掴まれるのはやはり影像美。冒頭のハニーハント、そしてタイトルにもなっているヒマラヤと星空などなど。
中でも一番印象的だったのが葬式のシーンをドローンで上昇して撮るシーン。
今までドローンは空撮というインパクトのみ、そこに表現などないのではと、どこかいい印象を持っていなかった自分でしたが、、浅はかでした。
魂というものが人にあるならば、それが帰る先はやはり天なのかなと思うそのシーン。必見だと思います。
東北、九州、そしてネパールと震災というテーマで遠く離れた土地がつながる作品であると同時に、僕が印象深かったのは梵さんがトークショーで語っていた懐かしい未来という、パラドックスにも聞こえるテーマでした。
ゲストの関野吉晴さんのコメントにもあった家族、信仰、そしてコミュニティ。
この三つが当たり前にあることの力強さ、そしてそれを失った社会の脆弱さを改めて感じました。この場合の信仰は信念に置き換えてもいいかもしれません。
いずれにせよ、例えば明日、僕が家や店や大切な人を一瞬で失ったとして、彼らのようにまた再び前を向くことができるのか。
僕も人生で色々大きなものを失ったことがあります。
未だにその苦しみから抜け切れていないところは正直あるのかもしれません。
時間に身を委ね、ただ忘れるのか、それとも。
地域として、人生として、復興するということは何なのか。
足るを知る世界から今後僕が考えなければならないこと、そして教訓とするべきことを色々教わった、そんな映画でした。大いに笑い、大いに悲しみ、大いに喜ぶ。
世界でいちばん美しいとはどういう思いを込めているのか。当たり前ですが風景に順位をつけるようなナンセンスではないのです。
また貴重なボン教の儀式や祭りの様子がたっぷり見られるのも実に興味深い。
完全にアウトサイダーではなく村人、当事者としての視点で捉える映像。ぜひ劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

近々僕もまたネパールを旅してみようと思いました。

2 thoughts on “世界でいちばん美しい村”

  1. ポイさん、こんばんは
    IGでフォローさせていただいているumiです。
    こちらでは初めてコメントさせていただきます。

    つい先程、『世界で一番美しい村』を観てきました〜!

    上手く表現できませんが
    確かな生活がそこにはあって
    ふだん何でも手に入る私たちにとって、美しいとは何かということを考えさせられました。

    写真も良いですが、大画面でみる映像でのリアルもまた良いものですね。
    長倉洋海さんと石川監督のトークイベントも良かったですよ。

    ポイさんも、ぜひ大画面でもう一度!

    オススメいただいてありがとうございました♪

    1. こんばんは!もう、全く気がついていないでご返信恐ろしいほど遅くなってしまいました。申し訳ないです。
      長倉さんとのトーク羨ましいです。どちらもがっつりファンなのです!
      梵さんは最近は少しご無沙汰しちゃっていますが何度かお店にも来ていただいたことがあったりして色々お話お伺いしたりするのですが、本当にかっこいい人なのです。映画もそうですが、僕は梵さん自身の集中力というか、作品作りに向かう力に一番の驚きを感じます。
      もしよかったらお気軽にお店も遊びに来てくださいねー。

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