スリや痴漢の類はあれども、今まで旅の途中で命か金か選びやがれ的な、おっかない目にあったことは実はほとんどないのです。初めて訪れた街でも本能的に避けて通る通りやブロックは多々あります。旅を始めた頃は一度歩き始めた道をおっかないと感じて引き返すのは腰抜けじゃ、みたいな無駄にマッチョな思考に脳をやられていたこともありましたが。。アホアホですね。よく生きながらえたものです。
そんな私が先日初めて新宿二丁目へ。そして今回表通りを通過したことなかった歌舞伎町を少しだけ路地裏探索しつつ、chim↑pomの廃ビルを使ったアート展、また明日も観てくれるかな?を見学に行ってまいりました。
しかし新宿。廃ビルも興味深いですが現役のビルディングも普段一階路面で営業している僕から見たら、異界そのものです。上の方登ると高山病にかかってしまいそうな摩天楼は世界遺産とかに認定してもいいのではと個人的には思いますが、はたして。
日もどっぷり暮れて、普段よく使う新宿三丁目の駅からわずか5分ほどでしょうか。ド派手な、そして何屋さんなんだか皆目見当もつかないネオンに圧倒される田舎者です。
なんてイノセントを装いましたがロボットレストランは興味津々。オープン当初に行っておくべきだったのがずるずるとタイミングを逃している内にな料金プランが変わってしまって二の足を踏んで言いました。
しかし総工費100億。100億円ですよ。バビロニア、欲望と不謹慎の大きな渦、そのど真ん中に今自分はいるんだと痛感できる空間力。
こちらは姉妹店?エントランスがそのままワームホールに直結、魂を宇宙に持っていかれそうです。
ここはホスト門。バビロンの北に位置していたというイシュタル門を彷彿とさせる、のかもしれません。
そしてこちらが舞台となる歌舞伎町振興組合ビル。それはそれはきらびやかなテナント集う商業ビルの片隅に、暗闇に紛れる地を這う虫のように佇んでおりました。
このエレベーターに乗って上階へ。そこから階段を下りていくということです。そういえば廃ビルでの展示は以前にも経験ありなのですが、やはり独特の緊張感。
そして最上階の風景。虚無の穴が強烈です。
一階まで貫通。入る前に落ちても自己責任という書類にサインしての入場でしたが、なるほど、一歩足を踏み込めば地獄逝き待ったなしです。
壁の青は感光剤、紫外線で焼き付けているとのこと。いわば部屋全体が写真ということになるのでしょうか。すごい。
こちら3階。東京のカラスをおびき出し、集めて、空を埋め尽くすという映像作品。
歴史を語る壁。
性欲電気変換装置。。
新聞に投稿したエロい電話番号に発情して電話するとこのマシーンが電気を帯びるという仕組みとのことです。
個人的には一番好きだったのがお掃除マシーンにペンキと刷毛を取り付けて放つという、少し意地悪な作品。永遠の彷徨い、何か暗喩のように感じてしまわないでもないです。
ピカチュウとは何なのか。突然変異のネズミとは。
カラスやネズミ。身近にある、忌み嫌われがちな都会の隣人について、毒のあるユーモアを交えて放つチンポムの作品。
正直あまり好きではなかった彼らですが、その発想や行動力、作品が放つ歪んだ魅力に改めて驚きました。好きじゃないけど素通りできない凄みってある意味、好きで凄いより強烈なのかもしれません。
東京とピカチュウ。
節電なんて言葉知らない世代も、もうじきに現れてくるのでしょうか。
そして一階へ。大作ビルバーガーをついに拝むことができました。
瓦礫はいつしか賽の河原へ。。
全壊する個展という言葉が持つ暴力と儚さが印象深い展示でした。
オリンピックに向けて次々と姿を消していくであろう、東京の片隅。
見慣れたはずの煤けた路地、瓦礫と欲望の集合する場所。
そして歌舞伎町が少しだけ愛おしいものに感じました。
- 松井直子さん、アンダマン諸島を彷徨う
- ハマちゃん、インドネシアを語る。