去年の夏の振り返りも最後になります。
牡鹿半島の旅もついに先端、鮎川エリアまでやってきました。
ここでは何と言っても吉増剛造さん。お恥ずかしい話ですがどういった方かよく知らなかったのですが、一言で言うと詩人。
しかしおそらく可視化できない雰囲気や気配、感情、あるいはそういった言葉すら生まれていない何かみたいなものを書きなぐるあまり、それは文章というにはもっと感覚に寄った、文学よりアート寄りな作品が出来上がっているようにも感じました。本も一冊お店にあるのでゆっくり読んでみようかと思います。
そして驚くことに、芸術祭の期間中基本滞在とのこと。
普通、土日少し顔だして、みたいなスタンスが一般的だと思うのですが、会うだけでなく一緒に飲んだり、なんなら泊まれるらしいです。すごい。
キュレーターの島袋道浩もいらっしゃって色々興味深いお話を聞くことができました。
市街地から離れた、本当に半島の先端にも様々な表現が。ここでも一番ぶっ飛んでいたのが営業中のホテルの一部屋に鍵を借りて訪問すると部屋中が詩。
もう一つ島袋さんの作品で、白い道の先にある鳥笛を吹きカモメと対話するという作品も面白かったです。
先にある金華山という島までの海峡は震災の時、強烈な引き潮で一瞬海底が見えたとか。時に自然は人間の想像力を優に超えてきます。
夕方と夜の境界線、仙台への帰路に少しだけですが新たに海と生活の境界線となったとんでもない大きさの防波堤に立ち寄りました。
そこに暮らした事もない僕は、その壁の是非についてはやはり語る資格を持たないのですが、小さな港町の愛おしい水色の風景が灰色に塗り固められてしまうことは、頼もしいというより、正直さみしくも感じました。
これは遠い東北の話に限らず、いわゆる一般論だけでなく、常にそこで暮らす人たちの意見、経験、知恵や感情を第一に考え、より良い世界を作っていってほしいと思いました。誰かのために誰かの暮らしが犠牲になることないように。