今回の展示では佐渡の能の写真をいくつか使わせてもらっています。
初めての屋外薪能。夢幻能と呼ばれる旅の僧が体験した不思議な物語を鑑賞しました。
この世のものではない存在が語る一夜の物語に現実と夢が溶け合い、やがて夜明けと共に消えていく儚さと美しさ。この地に流された世阿弥の哲学は今もなお受け継がれていることでしょう。
今、自分がいる場所が夢なのかそうでないのかは覚めてみないとわからない。鑑賞していてそんな気持ちになりました。
今回の展示は虚実が入り混じる構成になっていて、不老不死の伝説はおそらく作り話ではあるけれど彼女の植えた杉や松は現実に存在していて、今も圧倒的な生命力を誇示している。そしてその人間の友人や家族を作っても時間の流れに乗れないが故に置いて行かれてしまう切ない想いもまた確かなものなのかもしれません。
少し観光案内を。今回の日本海異界巡礼。
鳥取の花見潟墓地。墓跡の数2万とも言われる規模。砂丘を越えたネクロポリスの姿に畏敬の念を感じました。
しかもなぜこの場所に墓地がかたまっているのかは誰もよくわからないという不思議な霊場です。お盆の頃になると一斉に蝋燭が灯るとか。見てみたいですねぇ。
もう一つ。石川県の異界。加賀観音さん。
今はもう閉館され廃墟になっている、かと思いきや500円払って入場しましたとかさまざまな噂が流れる不思議な霊場。
自分が訪れたときはその中間だったような印象でした。
入口は空いているけれども誰もいない。ただ、星の数ほどの観音様がひしめく合う時間の止まった曼荼羅に圧倒されました。
800年生きて入滅した比丘尼、最後は若狭の小浜というのが定説になっているのですが故郷は諸説あるようで興味深いです。
長寿になるきっかけも人魚ではなく九つの穴を持つアワビだったり、1000年生きて200年他の人にあげちゃうなど譲渡もできたんかいと驚くエピソードたくさんあります。
佐渡ではピンポイントで実家があると聞いたので訪ねてみることにしました。
佐渡の比丘尼は旅をして一度帰省した際、誰も知っている人がいなくなった故郷で、自分が確かにこの集落で生まれたものであるという証に斎慎の隈(みしはせ人の墓)の存在を語り、信じてもらえたとあります。
斎慎ってなんじゃいと思って調べてみると諸説あるのですが大陸から海を超えてきた北方系のツングース民族であるとのこと。ここでもまた海を超えてきた人の物語が交際してとても興味深く感じました。
実家はもちろん、この斎慎の隈も佐渡の南にあるらしいとのことだったのですが、当然訪れる人もいなく捜索は超困難。そもそも架空の人の家探していますってすごく恥ずかしくて言い難いものですね。
ダメ元で郵便局の人に聞いたら一緒に探してくださって。。佐渡、温かいです。
地元の人も知らない場所を探して、その後も聞き込みを続け見つけました!実家と石碑。
だからなんじゃいということもないのですが、嬉しかった思い出です。
そこは、大海原が見える本当に静かで美しい村でした。