君にクリスティアンディオールの何がわかるというのだね。と言われると正直何もわかりませんと答えざるをえない私ですが行ってきました、現代美術館。しかもよかった!
興味のあるテーマでより深い知識と発見を探る楽しみ方とはまた別に、全く自分が接点を持たずに今日まで生きてきた世界について知るということは本当に財産だなと思う次第です。
ファッション。特にハイブランドと呼ばれる世界はお財布の事情もあって全くの無知。
それにしてもクリスチャン・ディオール。どこの国の人なのか。性別、年齢、そもそも人の名前なのか。
知らないからこそ行ってみよう。知ってみよう。
そういえば、これまた全く知らなかった石岡瑛子さんの展示を見に行ったのもこの現代美術館でした。
奇しくもファッション。
奇抜や斬新だけでなく素材を含め実用を視野に入れる、そして何より美しさを追求した上での表現の妙が印象的です。
実際、着ているところを想像すると色々面白い。素敵の極みみたいなモデルさんだけでなく、たとえば自分が着ていたらまた違った印象に。
今回特に来てよかったと思ったのが高木由利子さんの撮り下ろしの展示。
物撮りやポートレートにあまり惹かれたことがなかったのですがこれは別格。モデルさんの忍耐、そして数秒先の未来を見据える長時間露光のセンス。宿る気配。素晴らしかったです。
それにしても毎度毎度展示空間の構成すごいなーって思っている現代美術館ですが、今回は桁違いの手間とアイディアとおそらく予算をぶちこんでいらっしゃるのではないでしょうか。夢から夢へ物語が繋がっていくような空間構成。明らかに僕がよく訪れる展示とは異なる客層のお嬢様がたも終始目がハートになってキュンキュンしてらっしゃったご様子。爺はそれだけでなんだか嬉しいですじゃという気分に。
時間ギリギリだったので最後まで見れなかったですが映像がまたゴージャス。森の中に暮らす人魚や妖精、カタツムリや石人にディオールの服を届けに行ってみなさんうっとりみたいな話。しょうもないけど映像美やエグいです。
ディオールのゴージャスな世界を楽しんだあとダッシュで次の展示へ。上の階で行われている、大ファンの志賀理江子さんと竹内公太さんの展示、さばかれえぬ私へ
まず前置きなしに突如、東日本大震災の様子とその後を語る謎の女、そして目をつぶったまま真っ暗な浜辺をビュンビュン吹く風の中を歩き続ける映像。押し寄せる波は赤く不穏そのもの。
そして展示風景が尋常じゃない。
縮尺わからなくなるのですが壁面展示。見てる人のサイズこれくらい。そして逆に写真のサイズ!
内部には重機やずた袋が置かれて写真展とかインスタレーションとかを超えた空間としての緊張感がすごかったです。
僕は震災や復興について何が正しかったのか何がいけなかったのかを語りきれる言葉をまだ持ってはいませんが、人の数だけ想いや考え方はあると思うし、その悔しさや辛さだけは時間が戻らないように消えるものではないのだろうと思います。
何をしてもそれは美談にならないし、波や風を止めることができないように何度も何度も押し寄せてくる感情なのだろうと思います。
寄り添っていくことの難しさ。何が正解か、そもそも正解なんてあるのかわからない問いは、たった12年では答えなんで出ることはない。改めてそう思うのでした。