キューバの旅をもう少しだけ。
ハバナから憧れだったキューバの象徴、長方形のみで形成されているような、イカしたキャデラック(?)で友人から勧められた中部の町、トリニダーを目指しました。
シェアタクシーとは思えないゴージャスな外見、そしてお客様を載せる車体とは思えない、室内を黒く染め上げる排気ガス。このギャップも含めて、どこかメタファーのような車はガタゴトと不穏な音を立てながら進んでいきます。
ちょうど旅をした前年からだったでしょうか。キューバでもいわゆるクラシックカーではなく、プジョーやトヨタといった海外の、エコでで丈夫、燃費も良く、そして味気ない車が道を走り出したと聞きました。
やがて消えゆく時間の中で、古都への旅路は始まりました。
宿はいわゆる民泊。ハバナでお世話になったおばさんのいとこ?の家にお世話になることになりました。
この辺りは夕食付きが基本、そして、そしてトリニダーでの夕食はロブスターが基本!なのだそうです。ついたその瞬間からハングリー。
宿のベランダから眺める風景はのどかそのもの。
サトウキビとタバコを生産するために生まれた石造りの町は、静かで、そしてとても柔らかい光に満ちていました。
近郊のサトウキビ畑に聳えるイスナーガの塔。かつては数万人にも及ぶ黒人奴隷がこの地に運ばれ、働き、やがて死んでいきました。
そして、見つめるものがなくなった今。
笑顔が農園を満たしていて、月並みな感想ですが、それがすごく嬉しかったです。
帰路は図らずとも景観を損ねるのではないか、そんな旅人のエゴであまりよく思っていなかった欧州の車でハバナに戻ることになりました。サンタクララ経由。
排気ガスと利便性。革命とアメリカ。均衡が揺らぐ、そんな最後の瞬間でもトリニダーの光は変わることなく、静かに時を満たしていました。