新宿に何往復かする時気がついたのですが電車に乗ること自体が相当久しぶり。驚きました。
久しぶりにいくつか展示を見たり書店で写真集を見たりしたのですが、特に心に響いたのが小川康博さんの作品。
離島、沖縄からラダック、グァテマラなど古今東西の旅の瞬間を切り取っているのですがそこに流れる空気は常に一定に。粒子や煙、あるいは暗闇、揺れる眼差しなど、旅の先、あるいは我々が向かう先の不透明感をより意識させるような描写に強く惹かれました。写真集全部欲しかったのですが、特に個人的に思い入れのあった中国の三峡を舞台にした作品を購入。

長い旅の途中、僕も1999年にこの辺をうろうろしていた記憶があります。そう、記憶はあるのですが、なぜ一人でこの場所をルートに選んだのかその辺は20年の歳月でほぼ空白に。
ベトナムから広西チワン族自治区、重慶、そして四川省に向かった日々は確かにあったのですが、全く旅人に会わず、長江と渦巻く人の波と何かが変わりそうな中華の気配にの中ひたすら前に進み見聞を広げる日々。

見聞を広げた先に何があるのかは今でもよくわかっていませんが、世界一大きなダムが出来ること、そしてその開発の煽りでとんでもない数の人が川の底に沈む故郷を捨てどこか新しい土地で生きていかなくてはいけないこと。三国志の印象しかなかった僕はそこで多くのものを見たはずです。

大きなうねりを感じた日々は当時の僕の写真からはほとんど何も掬い取れませんが、小川さんの作品を見ていると、夢だったかもと思う日々や景色が鮮やかに蘇ります。
卵とトマトの炒め物の味、燃えたゴムやガソリンの匂い、ウェイ?!と怒鳴るように電話に出る声とクラクション、そして駅を降りるたびに海のように広がるなぜか背広を着た人、人、人。
五感で感じた中国。今の僕が何を感じるか、楽しみでもあり、その逆でもあったりします。
当時のことを知る方も知らない方も、ぜひご覧になってほしい一冊です。

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