仲良くしていただいている写真家、後藤勝さんから先日著書をいただきました。絶望のなかのほほえみ。
本日少し早く仕事が終わったのでようやく読書。一気に読みきってしまいました。

ようやく終わった内戦とそこから蔓延するエイズ。
2000年代初頭のカンボジア、貧困が死を生み、そして死が貧困をもたらす時代。
確実に本来の寿命ではない年齢でこの世を去らなくてはいけない人々と集う病棟。その悲壮感はもう言葉にできないものがあります。肉を失い骨と皮になり、やがて人間の体は限界が近づくと魂が浮き出るのでしょうか。
そしてその死期を待つ人々と著者の寄り添うような距離感で紡がれる文章に震えました。
特に表紙にもなっている女性、ティーが死ぬ前に写真を撮ってもらいたいと頼む件。
圧倒的な死に対し写真が出来ることはなんだろう。
この大地で起きていることを日本に、世界に伝えること、そして一人一人が確かにここに存在し、最後まで病気に対して勇気を持って踏みとどまったんだよという記録、そして鎮魂ではないかと改めて思いました。
我々がやがて灰になる前にこの大地にほほえみが戻りますように。

僕がカンボジアを訪れたのもいわゆる世紀末。ポルポトの時代が終わりようやく国境が開いた頃だったように思います。
軽トラの荷台に乗って月面のような穴が開きまくった荒野と密林をひたすら進み、ようやく訪れた首都プノンペンの印象は今でも鮮明に覚えています。
キャピトルという名前のゲストハウスで女性を買う目的だけで日本からこの地を訪れた年老いた男達。ひたすらお互いの武勇伝を語る姿は醜悪で惨めでした。
その時には距離を置くことしかできませんでしたが、今、改めて売られてきた少女の身の上と末路を知ると、改めて湧き上がるやるせなさで本当に辛いです。

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