写真集が売れない時代と聞きますが、最近写真集以外のものを買っていないのではという近況。衝動に突き動かされた購入の記録を。

アルゼンチンの作家さん、アレハンドロ・チャスキエルベルグ氏のLa Creciente。
月が満ちた夜にのみ撮影される作品に映るのは人里離れたデルタ地帯、そこで川と共に今を暮らす人々。
大型のカメラで長時間にわたり露光することで絵画のような不思議で唯一の世界観を作り上げているようです。
この作家さんは震災後の岩手県でも作品を撮っていて、これがまた素晴らしいのです。
以前よりずっと欲しかった写真集、JonasBendiksenのSATELLITES、ポイ書庫にやってまいりました。
旧ソ連邦に燻り続ける怪しい赤い光とロケットの残骸。
想像力の及ばない大地の風景。マニアックな世界ですがご興味ある方は是非。
名越啓介さんの写真集SMOKY MOUNTAIN。
十年かけて通い続けたというフィリピンのスラム、いわゆるゴミの山での暮らしを撮り続けた作品。どこかゴシックな幻想的な美しさと、早く夜が明けてくれてと祈りたくなるような恐ろしさは表裏一体なのかもしれません。
閲覧注意という言葉はあんまり好きじゃないですが、露骨、文字通りの意味で、そんな表現も多いです。
色々な意味で匂いと臭いを放つ一冊。
写真美術館でも個展を開催中の長倉洋海さん。
作品は人間交路や新シルクロードなど実はいろいろ持っているのですが、個人的には狩人のような鋭い視線で世界を凝視している初期の作品が特に好きです。
迷いや葛藤を包括しつつも前に進み、やがてマスードへ続いていく、泥臭い這うような歩み。男が男に惚れ込む一冊!
木村伊兵衛賞の写真展、そして愛知のトリエンナーレだったでしょうか、東北が内に秘める不穏な空気をそのまま念写したような作品に立ち竦みました。
田附勝さんの写真集、東北。
ストロボによって刻まれた爪痕のような影の濃さ。凍てついた古い家の床の温度、狩られた鹿が放つ匂い、呪術師の呟く音。
五感に緊張感の走る作品でした。
先日までPLACE Mで展示をされていた藤本さんの作品、その名も箱の中。
1988年、89年に東京の駅、そして電車の中で撮られた作品の展示です。
世界でも稀な沈黙の箱、灰色の秩序、そんな東京の通勤車両を無遠慮に中判のカメラでストロボを焚いてシャッターを切っていきます。。
そしてそこに映った表情は怪訝、困惑、あるいはそのどれでもないただ窓の外の暗闇に向かい目を開くだけの顔。
喜怒哀楽、どんな顔を今したらいいか、どう空気を読むか、そういった仮面をかぶる隙を与えない速度と迫力。
以前よりファンだった清水哲朗さんの写真集NewType、改めて今読み直しております。
草原でテント生活を送る、いわゆるモンゴルのパブリックイメージからの変化の過程をまとめた作品CHANGEを経て現在。時代は完全に推移したのか、モンゴル新世紀の常識のはるか上で流れる日常。
思わず二度見するユーモア溢れる写真が痛快な作品なのですが、それだけでない、何度も読み返しているうちに感じる、逆行できない加速する時代への皮肉と哀愁が印象深かったです。

僕がモンゴルを訪れたのは1999年。
あの時感じた世界の果てに来てしまったという高揚感は今も忘れられません。
ウランバートルの風景はだいぶ様変わりしたようですが、作品の後半に出てくる家族の肖像を見ると芯のところはやはり変わっていないんじゃないのかなとと思うのでした。こちらも仲良くしてもらっている写真家、竹沢うるまさんの写真集、KorLa。
青い霧に包まれ、青い氷の上を歩き、青い風に吹かれる。ドキュメントでありながらアートの領域でチベットの大地を再構築する技術と感性は圧巻の一言。旅から旅へではなく腰を据えてチベットと向き合うことで彼の地が持つ精神世界や宗教観と厳しくも美しい世界が結びついているように感じました。
3年をかけた長い旅の記録をまとめたWALK ABOUT,その旅を文章でまとめたSONGLINEもお店の書庫に置かせてもらっています。

まだまだ欲しい本はたくさんあるのですが財が尽きてしまいそうなので一旦これにて。

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